自動車検問の法的根拠及び自動車検問に関する権限の行使について述べなさい。
警察官が走行中の自動車を停止させ、自動車の見分、自動車検査証の確認、運転者等に対する質問等を行うことをいう。
自動車検問は、大別して「一斉検問」と「個別検問」に分けられるほか、法的根拠から次のような態様に分類することができる。
(1)警察法2条を根拠に行うもの
警戒検問等、不特定の一般犯罪の予防・検挙を目的とする自動車検問である。
(2)警職法2条を根拠に行うもの
緊急配備検問等、犯人の検挙、捜査情報収集を目的として行う自動車検問である。
(3)刑訴法を根拠に行うもの
被疑者の現行犯逮捕等、運転者等が特定の犯罪を犯したと認められる場合の自動車検問であり、任意捜査である場合は刑訴法197条1項を根拠とし、強制捜査である場合は刑訴法199条(通常逮捕)、刑訴法213条(現行犯逮捕)、刑訴法210条(緊急逮捕)が根拠となる。
(4)道交法を根拠に行うもの
飲酒検問等、交通違反の取締りを目的とする自動車検問であり、次の規定を根拠とすることができる。
ア 道交法58条の2(積載物の重量の測定等)
イ 道交法61条(危険防止の措置)
ウ 道交法63条1項(車両の検査等)
エ 道交法67条1項(危険防止の措置)
(1)停止させる際の有形力の行使
状況のいかんを問わず常に許容されるものではなく、必要性・緊急性等を考慮し、具体的状況の下で社会通念上相当と認められる限度において許容される(最決昭51.3.16)。
(2)有形力行使の具体例
ア 適法とされた行為
(ア) 運転席ドアを掴んだ行為(東京高判昭34.6.29)
(イ) 窓から手を差し入れ、エンジンのスイッチを切って運転を制止した行為(最決昭53.9.22)
イ 違法とされた行為
停止させた逃走車両の運転者の両腕を掴んで車外に引きずり降ろそうとした行為が、停止させる措置としては行き過ぎであるとして違法とされている(東京簡判昭49.9.20)。