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刑事訴訟法

接見交通、接見内容の聴取

[問題]

暴力団組員甲を逮捕し取調べ中、甲の所属する暴力団の組長から頼まれたとして弁護士が接見を求めてきた。A刑事課長は、留置主任官に接見させるよう通知し、取調べ官には接見後の取調べにおいて、甲から接見内容について聴取するよう指示した。本事例を踏まえ、A刑事課長の行為の適否について述べなさい。

  1. 接見交通権
  2. 刑訴法39条1項は、立会人を置くことなく、身体の拘束を受けている被疑者・被告人と弁護人等との接見交通権を保障している。身体の拘束を受けている被疑者等が、自己の自由と権利を守るため、弁護人を選任した上で、弁護人に相談し、その助言を受けるなど、弁護人から援助を受ける機会が認められている。

  3. 接見指定
  4. (1)意義

    捜査のため必要があるときは、公訴の提起前に限り、被疑者の有する防御の準備をする権利を不当に制限しない範囲で、捜査機関において、接見交通の日時、場所及び時間を指定することができる(刑訴法39条3項)。

    (2)趣旨

    勾留期間の制限等から、接見等を随時的に認めてしまうと、捜査に顕著な支障を及ぼしかねない。捜査の必要性と身柄被拘束者の防御権等の調和を図るため、公訴の提起前であれば、接見指定をなし得る。

    (3)捜査のため必要があるとき

    接見等を認めると取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生じる場合をいう。具体的には、現に被疑者を取調べ中である場合や、実況見分等に立ち会わせている場合等がこれに当たる(最判平11.3.24)

  5. 弁護人又は弁護人となろうとする者
  6. 弁護人とは、弁護人選任手続を終わった者をいい、弁護人となろうとする者とは、弁護人選任権者から弁護人になる依頼を受けているが、選任手続を完了していない者をいう。弁護人は、被疑者自身、被疑者の法定代理人・配偶者等の選任権者によって選任される必要がある。

  7. A刑事課長の行為の適否
  8. (1)接見させるように通知した行為

    甲の所属する暴力団の組長は弁護人選任権者に当たらず、来署した弁護士は、甲の弁護人等とはいえないため、甲と弁護士を面会させる法律上の義務はない。しかし、接見交通権が被疑者の防御のため重要な権利であることを踏まえ、接見させるように通知したA刑事課長の行為は、適法・妥当であるといえる。

    (2)接見内容についての聴取行為

    刑訴法が、立会人なく弁護人の接見を認めているのは、被疑者の防御権の行使につき、弁護人と緊密に連絡を保持する必要があるためである。したがって、捜査機関が、取調べにおいて接見の内容について聴取する行為は、特別な事情がない限り、被疑者の接見交通権を実質的に侵害することになり違法である。